ここでは、OSPFによるルーティングの設定をやってみます。

1.ルーティングテーブルをみてみよう

ネットワーク構成は以下です。
ルーティングの具体例

 ルータは、最適な経路を判断するために、宛先の経路情報を管理するルーティングテーブルを持っています。実際のルーティングテーブルをお見せする前に、先の図の場合のルータ1の設定を見てみましょう。以下がCiscoルータの設定(抜粋)です。
interface GigabitEthernet1   ←図のポート1 
 ip address 192.168.1.254 255.255.255.0

interface GigabitEthernet2   ←図のポート2
 ip address 192.168.2.254 255.255.255.0

interface GigabitEthernet3   ←図のポート3
 ip address 192.168.3.254 255.255.255.0
設定を少し補足します。「interface GigabitEthernet」というのは1Gbpsの速度を持つインターフェースという意味です。3つのインターフェースそれぞれにIPアドレスが割り当てられています。
 このように、ルータの各インターフェースには、IPアドレスおよびサブネット情報が設定されています。ですから、ルータに直接接続されているネットワークの情報をすでに知っています。
 では、先のネットワーク構成図の場合、ルータ1のルーティングテーブル(経路情報)はどうなるでしょうか。Ciscoのコマンドを入力して確認しましょう。
Router1#sh ip route
 ・・・
C 192.168.1.0/24 is directly connected, GigabitEthernet1
C 192.168.2.0/24 is directly connected, GigabitEthernet2
C 192.168.3.0/24 is directly connected, GigabitEthernet3
■ルータ1のルーティングテーブル    

では、この意味について解説します。
1.ルーティングテーブル
Cは△撚鮴發垢訥樟楡楝魁connected)のC
172.16.1.0/24のネットワークはルータに直接(directly)に接続(connected)
ルータに接続するポートがFastEthernet0

 今回のルーティングテーブル(経路情報)はどうやって作るのでしょうか?
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEかしげる

ルータは直接接続されているネットワークを知っているので、ルータが自ら作成するのでしょうか。
その通り。このルィンググンブテーブルは自動で作成されます。では、直接接続されていないネットワークおよび、その場合のルーティングについて、次の節で解説します。

2.直接接続されていないネットワークのルーティング

 ネットワークは世界中にありますから、ルータに直接接続されていないことがほとんどです。むしろ、直接接続されている方が稀です。
 以下の図を見てください。ルータ1は、192.168.4.0/24のネットワーク宛のパケットはルータ2に送り、192.168.5.0/24宛てのパケットはルータ3に送るという経路制御をします。
2.ルーティングの具体例

 しかし、192.168.4.0/24や192.168.5.0/24のネットワークは、ルータ1に直接接続されていません。この場合のルーティングテーブルは、ルータ1は知り得ません。どうすればいいのでしょうか。
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEほおづえ
 
 ルータに覚えさせるしかないと思います。
 その通りです。ルータに覚えさせる具体的な方法は2つあります。1つは,ネットワークの管理者がルーティング情報をルータに手動で記載する方法です。これをスタティックルーティング(静的ルーティング)と言います。スタティック(Static)とは、「静的」という意味です。
 もう1つは,情報を知っている他のルータに教えてもらいます。具体的には,ルータ同士で経路情報を交換することで,ルーティングテーブルに自動で記載するのです。これをダイナミックルーティング(動的ルーティング)といいます。ダイナミック(dynamic)とは、「動的」という意味です。

3.スタティックルーティング

 ルータ1に静的な経路(スタティックルート)を書いてみましょう。具体的には、192.168.4.0/24宛てのパケットが来たら、宛先のルータ(ネクストホップと言います)として、ルータ2(IPアドレスは192.168.2.254)に送るという情報を記載します。 では、Ciscoルータで以下のコマンドを実行します。
3.スタティックルーティング
^言茲離優奪肇錙璽
▲優ストホップとなるルータのIPアドレス

 今回は、192.168.5.0/24宛てのネットワークもあるので、もう一行、「ip route 192.168.5.0 255.255.255.0 192.168.3.254」も記載します。
 ルータ1に設定したConfigは以下になります。

ip route 192.168.4.0 255.255.255.0 192.168.2.254 ←192.168.4.0/24宛ての経路情報
ip route 192.168.5.0 255.255.255.0 192.168.2.254 ←192.168.5.0/24宛ての経路情報
■CiscoルータのConfig(インターフェース情報とスタティックルート)

ここで、show ip routeコマンドで、ルーティングテーブルを見てみましょう。
Router1#sh ip route
 ・・・
C 192.168.1.0/24 is directly connected, GigabitEthernet1
C 192.168.2.0/24 is directly connected, GigabitEthernet2
C 192.168.3.0/24 is directly connected, GigabitEthernet3
S 192.168.4.0/24 [1/0] via 192.168.2.254
S 192.168.5.0/24 [1/0] via 192.168.3.254
■ルータ1のルーティングテーブル

 では、Sと書かれたルーティングテーブルについて解説します。
3.スタティックルーティング_2
Sはスタティックルート(static route)のS
192.168.4.0/24のネットワーク宛の経路
1/0とありますが、前者の1は、アドミニストレーティブディスタンス値で、優先度を表します。たとえば、同じ宛先の経路情報が複数あった場合、数字が低い方が優先されます。スタティックは1、OSPFは110、RIPは120などと決められています。後者の0は、メトリックです。経由するルータの数と考えてください。すぐ隣のルータなので、経由するルータの数は0です。
ぅ優ストホップとなるルータのIPアドレス viaは、「~を経由して」という意味 に接続するポートがFastEthernet0

 この情報をまとめると、以下になります。 

 

宛先ネットワーク

ネクストホップ

インターフェース

C

192.168.1.0/24

-

GigabitEthernet1

C

192.168.2.0/24

-

GigabitEthernet2

C

192.168.3.0/24

 

GigabitEthernet3

S

192.168.4.0/24

192.168.2.254

-

S

192.168.5.0/24

192.168.3.254

-

4.OSPFの設定

では、OSPFの設定を紹介します。Ciscoルータで以下のコマンドを実行します。
4.OSPFの設定

 少し補足します。1行目は、OSPFを有効にするコマンドです。(※数字の1はプロセスIDですが、特に意識する必要はありません。)
2〜4行目は、ルータ1が知っているネットワークで、他のルータと経路を交換したいネットワークを記載します。RIPと違い、サブネットマスクも指定します。ですが、ワイルドカードとう0と1を逆にした表記方法を使います。たとえば、255.255.255.0のを2進数で表すと111111111111111100000000なので、これの0と1を逆にします。00000000000000000000000011111111になります。これを10進数表記にすると、0.0.0.255になります。また、最後にエリアIDを付けます。

 RIPのときと同様に、各ルータでこれらの設定をします。すると、RIPと同様に、ルータ同士がお互いに経路を交換してくれます。
 ではここで、show ip routeコマンドで、ルータ1のルーティングテーブルを見てみましょう。
Router1#show ip route
 ・・・
C 192.168.1.0/24 is directly connected, GigabitEthernet1
C 192.168.2.0/24 is directly connected, GigabitEthernet2
C 192.168.3.0/24 is directly connected, GigabitEthernet3
O 192.168.4.0/24 [110/2] via 192.168.2.254, 00:03:01, GigabitEthernet2
O 192.168.5.0/24 [110/2] via 192.168.3.254, 00:01:47, GigabitEthernet3
O 192.168.6.0/24 [110/2] via 192.168.3.254, 00:01:47, GigabitEthernet3
                               [110/2] via 192.168.2.254, 00:03:01, GigabitEthernet2
■ルータ1のルーティングテーブル  

 では、Rと書かれたルーティングテーブルについて解説します。
4.OSPFの設定_2
OはOSPFのO
192.168.4.0/24のネットワーク宛の経路
110/2とありますが、前者の1は、アドミニストレーティブディスタンス値で、優先度を表します。後者の2はOSPFの場合はコスト(※後述)を意味します。
ぅ優ストホップとなるルータのIPアドレス viaは、「~を経由して」という意味
シ佻情報を学習してからの経過時間
Ε僖吋奪箸鮟侘呂垢襯ぅ鵐拭璽侫А璽

 この情報をまとめると、以下になります。

 

宛先ネットワーク

コスト

ネクストホップ

インターフェース

C

192.168.1.0/24

-

-

GigabitEthernet1

C

192.168.2.0/24

-

-

GigabitEthernet2

C

192.168.3.0/24

-

 

GigabitEthernet3

O

192.168.4.0/24

2

192.168.2.254

GigabitEthernet2

O

192.168.5.0/24

2

192.168.3.254

GigabitEthernet3

O

192.168.6.0/24

2

192.168.3.254

192.168.2.254

GigabitEthernet3

GigabitEthernet2

 コストに関しては、この後に説明します。

5.OSPFのコスト

 OSPFの重要な概念として,コストがあります。コストは,回線速度に反比例した式で計算される値です。コストは,回線速度の大きい方が小さい値になります。たとえば,Ciscoルータの場合、デフォルトの10Mbpsの回線のコストは10で、100Mや1Gbpsの回線のコストは1です。ですから、OSPFでは、10Mbpsの回線と、100Mbpsの回線の2つがあれば、コストが小さい100Mbpsの回線を経路として選択します。
 では、次のような簡単なネットワークを考えましょう。本社とデータセンターを通信事業者が提供される1GbpsのWAN回線で接続しています。WAN1は品質が確保された広帯域な回線、WAN2は品質が担保されないベストエフォートの回線を契約したとします。
 この場合、品質が高いWAN1を優先したいですよね。その設計をしてみましょう。
5.OSPFのコスト
 まずは、OSPFの設定をします。
 ■ルータ1
router ospf 1  ←OSFPを有効に。
network 192.168.1.0 0.0.0.255 area 0
network 192.168.2.0 0.0.0.255 area 0
network 192.168.3.0 0.0.0.255 area 0
 ■ルータ2
router ospf 1  ←OSFPを有効に。
network 192.168.4.0 0.0.0.255 area 0
network 192.168.2.0 0.0.0.255 area 0
network 192.168.3.0 0.0.0.255 area 0

 このとき、ルータ1のWAN1に接続されているポート1(GigabitEthernet 1)を見てみましょう。
Router#show ip ospf interface GigabitEthernet 1
GigabitEthernet 1 is up, line protocol is up (connected)
 Internet Address 192.168.2.253/24, Area 0
  Process ID 1, Router ID 192.168.2.253, Network Type BROADCAST, Cost: 1

 このように、1Gbps回線なので、自動でCost1が割り当てられているのが確認できます。同様に、WAN2に接続されているポート2(GigabitEthernet 2)も同じくCostは1です。

ネットワークスペシャリストを目指す女性SEかしげる
この場合、データセンター向けの通信は、WAN1とWAN2のどちらを通るのですか?
 負荷分散される。つまり、WAN1とWAN2の両方に振り分けられます。
 では、このときのルーティングテーブルを見てみましょう。(OSPF部分だけ)
O 192.168.4.0/24 [110/2] via 192.168.2.254, 00:02:17, GigabitEthernet 1
          [110/2] via 192.168.3.254, 00:02:17, GigabitEthernet 2

 このように、2つの経路が表示されています。つまり、両方の経路が有効になっているのです。
 さて、ここで、[110/2]の2の値は、OSPFのコストであることは既に説明した通りです。なぜコストが1ではなくて2になるかを解説します。それは、ルータ1のインターフェースでCostが1加算され、ルータ2のインターフェースでもCostが1加算されるので、合計2になるのです。

 ではここで、ポート1(GigabitEthernet 1)が接続されているWAN1を優先したいので、ポート2(GigabitEthernet 2)のコストを10にしてみましょう。
Router(config)# interface GigabitEthernet 2
Router(config-if)#ip ospf cost 10

 もう一度、インターフェースのCostを見てみます。
Router#show ip ospf interface GigabitEthernet 2
GigabitEthernet 2 is up, line protocol is up (connected)
 Internet Address 192.168.3.253/24, Area 0
 Process ID 1, Router ID 192.168.3.253, Network Type BROADCAST, Cost: 10

 設定した通り、コストが10になりました。
 続けて、ルーティングテーブルを見てみましょう。
O 192.168.4.0/24 [110/2] via 192.168.2.254, 00:05:08, GigabitEthernet 1
 今度は、優先度が高いWAN1の回線であるポート1(GigabitEthernet 1)の経路情報だけになっています。
 では、ここで、WAN1のケーブルを切断しましょう。そして、あらためて経路情報を確認します。
O 192.168.4.0/24 [110/11] via 192.168.3.254, 00:06:51, GigabitEthernet 2
 すると、今度は、WAN2の回線であるポート2(GigabitEthernet 2)が有効になっていることが分かります。

6.RIPとOSPFの経路変更時間の違い

 RIPは,定期的な情報交換(レギュラーアップデート)として,30秒間隔で経路情報を交換し、実際に経路情報が変更されるには,さらに時間がかかります。先のルータが3台の構成で、インターフェースがダウンした際に、経路が切り替わるのに3分以上かかりました。一方のOSPFの場合、経路情報の交換は10秒ごとでして、RIPと同じ障害を起こした場合に、切り替わるまでの時間は10秒ちょっとでした。

(1)RIPの場合
6.RIPとOSPFの経路変更時間の違い_(1)RIPの場合
タイムアウトが3分以上続く

(2)OSPFの場合
6.RIPとOSPFの経路変更時間の違い_(2)OSPFの場合
このように、タイムアウトになったのは2回だけで、10秒少々でネットワークが復旧

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