ネットワークスペシャリスト - SE娘の剣 -

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冗長化の仕組みや技術

1.冗長化の仕組みや技術

■問1

冗長化の仕組みや技術を、以下の分類で列挙してください。

(1)物理的
(2)レイヤ2
(3)レイヤ3
(4)上位レイヤ






■答1
以下が代表的なものになります。この分類で覚えることが大事ではなく、それぞれの言葉を理解した上で、自分の中で整理することが大事です。こうすることで、バラバラに覚えていた知識が体系だてて分かるようになります。

(1)物理的
 ・スタック
 ・RAIDやミラーリング
 ※電源やファンの冗長化は、「仕組み」や「技術」とは言えないので、ここでは無しとします。現場では大事な概念です。
(2)レイヤ2
 ・STP
 ・リンクアグリゲーション
 ・チーミング
(3)レイヤ3
 ・VRRP
 ・ルーティングによる冗長化(OSPFなど)
 ・FWの独自機能による冗長化 ←過去には、詳細に問われました。
(4)上位レイヤ
 ・負荷分散装置
 ・DNSラウンドロビン
 ※その他、各種ミドルウェア等による冗長化の仕組みがあります。例えばDBの冗長化、クラスタリングなど。

■問2

これらの技術の中で、冗長化だけでなく、帯域増大などのスループット向上にも寄与するものは何か?






■答
Active-Stanbyでないものは、スループット
向上に寄与します。

・リンクアグリゲーション
・チーミング(Acive-Activeの場合よる)
・ルーティングによる冗長化(OSPFでコストを同じにしてロードバランスした場合)
 ・負荷分散装置
 ・DNSラウンドロビン

2.スタック

物理レベルの冗長化の仕組みとしてスタックがあります。スタック(stack)という言葉は、「積み重ねる」という意味です。スタックは2台以上のスイッチングハブを主に専用ケーブル(光ケーブルの場合もあります)で接続し、1台として動作させる技術です。スタックする機器は、原則として同じ機器である必要があります。

■Stackケーブルによる接続
Stack接続は簡単で、スイッチに付属している専用のStackケーブルで、複数のスイッチを接続するだけです。Stack用の特別な設定は要りません。(★HPの場合はIRFで、光ケーブルで接続します)

Stack接続したときのConfigですが、1号機のコンソールポートから接続しても、2号機から接続しても、どちらも同じConfigが表示されます。つまり、2台の機器で設定情報(Config)も共有されるのです。
設定をみると、従来は24ポートのCatalyst3750が、ポート数が48ポートにまで増えています。
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEあれ? 

機器を冗長化しても、その機器に接続されているケーブルも冗長化する必要がありますよね?
もちろんそう。ではここで、スタック接続した場合の機器とケーブルの構成を紹介します。一例ですが、以下のような構成になります。

LANケーブル(または光ケーブル)の接続ですが、2本(またはそれ以上)のLANケーブルをスタック接続したスイッチに1つずつ接続します。そして、2台の機器を1つの機器として動作させたように、複数のLANケーブルを1本のLANケーブルのように動作させます(後述するリンクアグリゲーション)。こうすれば、図のスイッチ1がダウンしても、スイッチ2とスイッチ3に接続されているLANケーブルを使うことで、スイッチ間の接続性を確保できます。

3.RPOとRTO

 バックアップ対策を検討する際において、復旧にかかる時間や、どの時点までデータを復元できるかは大事な要素です。これらの指標として、RTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)があります。どちらも,短時間であればあるほど,対策費用は大きくなります。

用語 意味 解説
RPO(Recovery Point Objective) 目標復旧時点 RPOは,障害発生からどの時点までデータを復旧できるかの時間です。
RTO(Recovery Time Objective) 目標復旧時間 RTOは,障害が発生してからシステムが復旧するまでに要する時間です。

H20NW午後Ⅰ問2にRTO関連の問題がある。

バックアップ対策を実施する際の要件として、RPO(Recovery Point Objective)、RTO(Recovery Time Objective)が重要である。ここでは、RPOは、障害発生からどの時点までデータを復旧できるかを表す指標とし、RTOは、障害が発生してからシステムが復旧するまでの時間を表わす指標とする。どちらも、短時間であればあるほど、費用は大きくなる。

RTOとRPO

4.VRF

ネットワークスペシャリスト試験の過去問(H25年NW午後Ⅰ問3)には、次の記述がある。

過去問(H25年NW午後Ⅰ問3)
L3SWには,VRF (Virtual Routing and Fowarding)機能をもたせる。これは,一つのルータやL3SWに,複数の独立した仮想〔 エ 〕を稼働させる機能である。この機能によって,個別に構築されてきたL3SWを統合することができる。






VRF(Virtual Routing and Fowarding)という言葉にRoutingという文字があるとおり、VRFはレイヤ3のネットワーク仮想化技術である。一方のVLANはレイヤ2の仮想化技術。
VRFを使うと、一つの筐体で、同じIPアドレスのネットワークを、別々に共存できる。
参考であるが、IPアドレスは重複できても、VLAN IDの重複はできない。

空欄[ エ ]
VRF (Virtual Routing and Forwarding)機能とは,一つの筐体の中に複数の仮想ルータを設定する機能である。Routingという言葉の通りです。

解答:ルータ

5.バックアップとアーカイブの違い

女性目閉じる



同じと考えてもテスト的に支障は無いでしょう。
アーカイブ(archive)は「古文書」の意味。アーカイブは、元々保存されていないものを新規に保存する。
バックアップは、もともと保存されているものを、障害などに備えてバックアップする。アーカイブされたものをバックアップすることはあるが、バックアップされたものをアーカイブすることはない。

リンクアグリゲーションとチーミング

(1)仕組みと目的

・IEEE802.3ad
・過去問ではリンクアグリケーションのことを、「コンピュータとスイッチングハブ、又は2台のスイッチングハブの間を接続する複数の物理回線を論理的に1本の回線に束ねる技術(H20NW午前 問24)」と述べている。CiscoではFEC(Fast EtherChannel)とかGEC(Gigabit EtherChannel)と言われているので、イーサチャネルという言葉のほうがなじみ深いかもしれない。
リンクアグリゲーション

では問題。リンクアグリゲーションの利点は何か?

これは即答してほしい。





答えは、①帯域拡大、②冗長化(による信頼性向上)、である。(※過去問H23NW午後Ⅱ問2より)
2
 
複数のポートを束ねることで、スイッチのMACアドレステーブルとかはややこしくならないんですか?
 そのあたりは仮想化の技術と同様で、利用者は意識する必要がなく、スイッチ側で処理している。
また、サーバのNICを冗長化する技術であるチーミングに関しても、理解してほしい。
女性直立
これは便利ですね。
最近はサーバとストレージ間で大容量の通信が必要になってます。
1Gを8本束ねれば、8Gbpsのスループットになりますね。
いや、ちょっと注意が必要だ。必ずしもそうとは限らない。

単純化して2本のLAGで考えます。
LAGの場合、1つのパケットを半分にして、2本の回線に同時に流すわけではありません。1つ目のパケットは1本目の回線、2つ目のパケットは2本目の回線などと、パケットを分散することで、冗長化と帯域向上を図っています。
LAG

よって、IPアドレスベースなどで負荷分散するため、同じIPアドレスとの通信だと、同じ線を使う。だから、8本あっても、実際には1本しか使われていないかもしれない。
女性ハテナ


なんでそんな仕様なんですか?
8本でロードバランスするような仕様にすればいいじゃないですか。
順序制御が難しいからね。
1000kのフレームと100kのフレームであれば、100kの方が速く届く。すると、フレームの順序が無茶苦茶になる可能性がある。だから、同じIPアドレス間の通信は同じ線で流すようにしている。イーサネットファブリックの仕組みは、技術的にこれを解消するものらしいので、対処できる製品もあるかもしれない。

(2)STPと比較したリンクアグリゲーションの利点

この点に関して、H28AP午後問5に出題がある。
「リンクアグリゲーションの構成は,STPの構成に比べて利点が多いことが分かった。(一部筆者が修正)」とあり、この利点が選択式で問われています。
正解は、以下の2つです。
・経路障害が発生したとき,通信が中断したとしても短時間で済む。
・経路障害が発生しても,L2SW2及びL2SW3の負荷は増加しない。

ただ、後者に関しては、スイッチングハブは負荷が高くなってもスループットが落ちるようなことはありません。
なので、利点としては、以下として整理できるでしょう。
①経路障害が発生したとき,通信が中断したとしても短時間で済む。
②ケーブルを束ねて通信できることで、通信帯域が拡大する。

(3)静的設定とLACP

固定で静的に設定する(Cisco社の場合のコマンドではmode on)場合と、LACPなどのネゴシエーションのプロトコルを利用して動的に設定する場合がある。動的に設定する場合は、ネゴシエーションなどを自動でやってくれるので便利であるが、異機種の場合は静的に設定したほうがよいだろう。

■CiscoのCatalystでの設定例は以下 ※ルータの場合、892などのローエンドでは設定ができない。
(1)インターフェース1と2をLAG設定。
❶mode onで固定設定
Switch(config)#interface range fastEthernet 0/1 - 2
Switch(config-if-range)#switchport mode access
Switch(config-if-range)#switchport access vlan 10
Switch(config-if-range)#channel-group 1 mode on

❷LACPの場合  ※on をactiveにするだけ
Switch(config)#interface range fastEthernet 0/1 – 2 ←1番,2番ポートに設定
Switch(config-if-range)#switchport mode access  ←ポートVLANの設定
Switch(config-if-range)#switchport access vlan 10 ←VLAN番号を10に設定
Switch(config-if-range)#channel-group 1 mode active ←リンクアグリゲーションの設定

(2)状態確認コマンド
Switch#sh etherchannel summary
(中略)
Group  Port-channel  Protocol    Ports
------+-------------+-----------+-----------------------------------------------
1      Po1(SU)          -        Fa0/1(P)    Fa0/2(P)

(4)スイッチを冗長化するときの構成

スイッチを冗長化(、今回は2重化と考えてください)する場合の構成は、以下の2つが考えられます。
①STP+VRRPで冗長化する
②スタック接続し、ケーブルはリンクアグリゲーションとする。

Q1.L3スイッチを冗長化すると仮定して、それぞれの物理構成および論理構成を書け






A1.
stp+VRRP

Q2.どちらが利点があるか、具体的に述べよ。






A2.②の方が利点がある。その理由は以下です。
 ・処理速度の向上と、帯域を有効に使える点
   ①の場合は、利用しているのは1台の機器と片方のケーブル。
   ②の場合は、2台の機器と2台のケーブルを使える
 ・構成がシンプルになる
   STPやVRRPで、どこがブロックされているとか、どっちがマスターだとかの設計および状態確認をせずにすむ。
 ・切り替わり時間が速い
   特にSTPは切り替わりに時間がかかる

Q3.②の冗長化技術があれば、STPは不要か






A3.冗長化技術に関しては、その通りです。
ですが、STPはループ対策という重要なミッションがあります。
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEあれ? 

スタック+リンクアグリを使えば、ループそのものを無くすことができますよね?
はい、無くすことができますので、シンプルで理想的な構成です。
ですが、過去にも多くの企業で経験があったと思いますが、誤ってケーブル接続することで、意図せずループすることがあるのです。だから、スタック+STPで冗長化をしていて、ループが無い構成であっても、STPはONにしておくべきなのです。

■参考解説
試験範囲を大幅に超えていますので、理解する必要はありません。
解説には設定に関する知識がいるので、読んでわからなくても構いません(説明も不十分ですが、ご了承ください)
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEハテナ


①-Aの構成で、STPは必要ですか?
まあ、なくてもいいです。
①-Bにあるように、Standby trackという設定を入れればです。
具体的には、192.168.1.1のVRRPが切り替わったら、172.16.1.1のVRRPも切り替わるという設定です。
①-Bを見てみましょう。
もし、L3SWの下側のケーブルが断線した場合、VRRPによって、右側のL3SWがActiveになります。しかし、上位の172.16.1.1のセグメントでは、VRRPが切り替わりません。
そこで、①-Aのように、STPが有効でケーブルが接続されていれば、正常な通信ができます。
または、先に説明した、Standby trackという設定を入れて、上側のVRRPも切り替えます。 

過去問(H30秋SM午前Ⅱ)
問22 スイッチングハブ同士を接続する際に,複数のポートを束ねて一つの論理ポートとして扱う技術はどれか。

ア MIME   イ MIMO  ウ マルチパート  エ リンクアグリゲーション






正解:エ

(5)リンクアグリゲーションと負荷分散

リンクアグリゲーションでは、1つ目のパケットは1本目の回線、2つ目のパケットは2本目の回線などと、パケットを分散することで、冗長化と帯域向上を図っています。
つまり、負荷分散をしています。
さて、以下の図で考えましょう。
LAG
このとき、L3SW3からコアルータ1へ送られるフレーム(図のフレームA)の、送信元MACアドレスと宛先MACアドレスは何になるでしょうか?
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEあれ? 

送信元MACアドレスはL3SW3、宛先MACアドレスは、コアルータ1ですか?
そうです。これは、送信元をPC1からPC2やPC3、宛先をサーバ1からサーバ2などに変更しても変わりません。ということは、[送信元MACアドレス,宛先MACアドレス]の組でハッシュ計算すると、常に同じ値になります。ですから、常に同じケーブルを使って通信がされるため、負荷分散がされません。
ですが、実際には、スイッチングハブは各ポート単位でMACアドレスを持っています。なので、負荷分散的には、同一の宛先MACアドレスではないのです。(要確認)

2.チーミング

2
 
チーミングとリンクアグリゲーションって一緒ですか?
どちらも、LANケーブルを冗長化する技術だったと思います。
まあ、同じと考えてもいいが、厳密には違う。
多少乱暴ではあるば、リンクアグリゲーションは、NW機器の冗長化。チーミングはサーバのNICの冗長化と考えておいてよい。
実際の設定も、リンクアグリゲーションの設定は、SWで設定し、チーミングの設定はサーバにて設定する。
過去問では、両者に関して以下の説明がある。これからも、リンクアグリゲーションはNW機器、チーミングはサーバのNICの設定と考えられる。

過去問(H23NW午後Ⅱ)
問2 これらのL2SWから,サーバ,NAS間の接続には,リンクアグリゲーションを設定します。サーバとNASのNICには,チーミング機能を設定して2本の回線に負荷を分散させ,[ ? ]と冗長化を図ります。






ちなみに、[ ? ]には、帯域増大が入る。
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEあれ? 


なぜ2つの技術があるのですか?どちらか1つでもいいと思います。
たしかに、どちらもLANケーブルを冗長化するという点では同じです。
スイッチのポートと、サーバのNICの違いを述べるとすると、サーバのNICはMACアドレスを持ちます。2枚のNICがあれば、本来であれば2つのMACアドレスを持ちます。通信をする際にはMACアドレスをどうするのか、そのまま使うのか、仮想MACアドレスを使うのかなども含めて考慮する必要があり、異なる技術になります。

■参考情報
某サーバの設定を確認したところ、チーミング方式は以下の3つがあった。

方式 説明
Active-Standby Activeを使う。障害がおきればStandbyに
Active-Active ロードバランス 
Active-Active リンクアグリゲーションと同じ(だと思う)

※①の場合、MACアドレスは2つのNICで同じものを使う。メーカによって違うが、仮想MACを持つのではなく、AcitveのMACアドレスをStanby時にも利用すると思う。

※③の場合、100MのNICであれば200Mのスピードを出すことができる。しかし、対向もリンクアグリゲーションに対応している必要があるので、③を使うことは少ないだろう。