ネットワークスペシャリスト - SE娘の剣 -

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無線LAN応用

1.CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)

ネットワークスペシャリスト試験の過去問では、CSMA/CAのことを「無線LANで使用される搬送波感知多重アクセス/衝突回避方式(H19NW午前問46)」とある。また、H21NW午後2-1では、「無線LANでは、イーサネットと異なるCSMA/CA方式と呼ばれるアクセス方式が使われている。通信を開始する無線端末が、ほかの端末が電波を出していないかを、事前に確認する方式である。」とある。

このように通信をしているので、無線LANでは半二重通信である。

❶隠れ端末問題
イーサネットではアクセス制御にCSMA/CDを利用しているが、無線LANではCSMA/CAを採用している。なぜなら、衝突を検出するしくみが不十分(以下の図を参照)で、送信電波も弱いためである。
過去問(H31春SC午前2問18)では、「無線LANの隠れ端末問題」として、「端末が別のアクセスポイントとアソシエーションを確立することによって,その端末が元のアクセスポイントからは見えなくなる問題」とある。
無線


AはBとCが通信していることがわからない。このように、衝突を検出することは難しいというか工夫がいる。

→RTS/CTS制御
※これは、CSMA/CA方式に置き換わるのではなく、CSMA/CA方式+RTS/CTS制御である
❷CSMA/CA
衝突を検知しなくても、衝突を回避する仕組みを持とうというのが、CA(Collision Avoidance)方式。具体的には、通信路が一定時間空いているかを送信の都度確認する。(CD方式は、衝突を検出できるので、毎回の確認は不要)
ただ、いくら回避しようとしても衝突は起こる。かつ、衝突を検知できない。そこで、きちんと受信できたかは、受信側がACK(ACKnowledge)を返すことで確認する。ACKが帰って来ない場合は、再送する。
なんとなくわかりにくいと思うので、簡単に違いを述べる。CSMA/CDはCD(Collision Detection)とあるように、衝突を検知したらジャム信号にてネットワークに流す。これによって衝突したことが分かり、送信者は一定時間を待って再送する。CSMA/CAはCSMA/CDとは逆で、成功したらACKを返す。送信者は、受信者からのACKを受け取らない場合に一定時間を待って再送する。

2.PoE(Power over Ethernet)

❶PoEとは
言葉の通り、LANケーブル(Ethernet)の上(over)で電源(Power)を供給する仕組み。無線のAPのように、天井などの電源コンセントが無いような場所に設置する場合、配線が柔軟で100mまで敷設できるPoEの仕組みはとても便利である。

H21NW午後1問1では以下の説明がある。

APにはIEEE 802.3af規格のPoEと呼ばれる技術によって、UTPの4対のより対線のうち2対を使って電源が供給されている。

※2対ということは4本の線を使っている。

❷どの線を通って電気が流れるか?
・10/100BASE-Tの通信では、1236番のみを利用し、4578番は利用していない。そこで、利用していない2対(4578番)を使って電源を供給する。これをAlternative B(パターンB)という。
・一方、通信で利用している2対(1236番)を利用すして送るのをパターンAという。特に混線したり、雑音が入ることもない。※ただ、こっちは少ない。

❸どうやってLAN上に電源を送るか?
実際に電源(PoE含む)の設計をしてみよう。
APの電源供給方法は、以下の3つである。一般的にPoEを使うことが多いだろう。なぜなら、天井などに無線APをつける場合、そこに電源があることは少ないからだ。それに、単純ではあるが、LANケーブルで電源も兼ねられるなら、便利である。

【電源供給方法】
①無線APについている電源コンセントから電源をとる。
②PoEスイッチにLANケーブルを差し、LANケーブル経由で電源をとる。
 このためには、PoE対応のスイッチングHUBを用意する必要があるが、値段はかなり高い。通常のスイッチの1.5倍くらいするだろう。
③PoEスイッチの代わりに、PoEアダプタを使用する。
 PoEスイッチが無くても、これを接続すればPoE給電ができる。価格は数千円~1万円程度。ただ、APが10個あれば、このアダプタも10個必要となり、電源コンセントも10個いる。置き場所も考えなくてはいけない。

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 ❹規格
・IEEE802.3af:通常のPoE。15.4Wの給電電力。
・IEEE802.3at:PoE+。30Wの給電電力  ※給電能力は多少の前後があるでしょう。
 PoE+は屋外用の無線APの一部で、PoE+が必須になる。屋外用は暑さ寒さに耐えるための機能のために、電源も通常より必要なのであろう。
※H24NW午後1問2では、この規格が穴埋めで問われた。

❺PoE関連の過去問(H24NW午後Ⅰ問2)

BCに導入するAPは,電源コンセントの位置を気にしなくて済むように, LANケーブルから電力を取れるPoE(Power over Ethernet)に対応するものを選定した。
PoEは, IEEE[ ア ]afとして規格化されており,給電側の機器をPSE(Power Sourcing Equipment),受電側の機器をPD(Powered Device)という。[ イ ]は,機器が接続されると,[ ウ ]に対応している機器かどうかチェックする。したがって,同一のネットワーク内に対応機器と非対応機器の混在が可能となる。導入予定のL2SWは,各イーサネットポートに対して最大15.4 W,装置全体では56Wの給電能力をもち,データ伝送において通常使用されるLANケーブルの1,2, 3, 6番以外の[ エ ]番のピンを給電に使用するAlternative B 方式なので,
結線には注意が必要である。機器によっては電力が不足する場合があるので,各ポー卜に30Wの電力を供給できる[ オ ]という規格もあるが,導入予定のAPの最大消費電力は12Wなので,今回は採用しない。

設問1(1) 本文中の[ ア ]~[ オ ]に入れる適切な字句を答えよ。






これは難問だ。アとオは知らないと解けない。アは802.11とした人もいるかと思う。
イ、ウ、エは考えれば解けるが、イとウは問題文の言葉を使うということに抵抗がある人もいただろう。そういう意味では、この問題も難しい。使っていいとわかれば、国語の問題として理解は可能だ。エに関しては、ケーブルは8本でできているので、12345678の中から、1236を除くと4578であることが分かる。これは簡単だったであろう。また、基本的には802.3afの15.4wのPoEで十分である。無線APの種類によっては、屋外の氷点下でも適温を保つためや、IEEE802.11acなどのように1.3Gbpsというフルスピードを出すためにはIEEE802.3atによる30w電源が必要なものもある。
オは「PoE+」と答えた人も多かったであろう。「規格」という言葉からするとIEEE802.3atが適切であるが、正解または部分点扱いになるのではないかと考える。この点は試験センターしか分からないだろう

ア:802.3
イ:PSE
ウ:PoE
エ:4,5,7,8
オ:IEEE802.3at
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEあれ 

PSEとPDって何ですか?
今回のケースで言うと、PSEはL2SW、PDは無線AP 

3.ローミング

情報処理技術者試験ではローミングと言いますが、ハンドオーバーという言葉のほうが、なじみ深いかもしれません。両者の定義の違いはITproにありますが、ここでは両者を同じものとして解説します(後半にメモとして記載します)。
女性直立

過去問では、無線LAN(IEEE802.11)のローミング機能を「異なるアクセスポイントのエリアに端末が移動しても、そのまま通信を継続できるようにする機能(H16NW午前 問40)」と述べられています。
この機能はなかなか便利です。あまりないだろうが、パソコンを持って1階から2階に上がるとき、APが自動で切り替わるローミングにより、通信が(ほとんど)切れない。
携帯電話ではローミングの機能により、新幹線などの高速移動通信中でも通信の継続性を保っている。

Q. ローミングを処理しているのは以下のどれ?
 ア AP
 イ パソコンの無線LANカード
 ウ 無線LANコントローラ






A. ローミングはAPではなく、パソコンの無線LANカードでの処理である。無線LANカードが、常にAPから電波を受信し、電波の強いAPと自動で接続しているだけである。だから、例えば移動していなくても、接続しているAPがダウンしたら、自動的に違うAPと接続を始める。
 ローミングするためには、SSIDや認証キーなどを合わせておく必要がるのが注意点です。

■ローミングとハンドオーバの違い
ネットワークスペシャリスト試験の過去問をみてみましょう。無線LAN(IEEE802.11)のローミング機能を「異なるアクセスポイントのエリアに端末が移動しても、そのまま通信を継続できるようにする機能(H16NW午前問40)」と述べています。また、「ハンドオーバ」に関しては、「無線LAN端末がAP間を移動(H29NW午後Ⅱ問2)」とあります。
ローミングは、異なる携帯事業者のエリアでも、通信をできるようにするサービスを思い浮かべる人もいるでしょう。
ローミングは、携帯や無線を提供する事業者側の仕組みで、ハンドオーバは、端末が移動する際にAPを切り替えることで、端末側の仕組みと考えて下さい。
ただ、同じと思って学習して問題ありません。

4.無線LANコントローラ(WLC)

最近は無線LANコントローラ(WLC)を使った無線LANが多い。

1.WLCの機能および特徴

WLCの機能及び特徴に関しては、H24NW午後1問2に記載がある。

B君は,既に無線LANを導入している本社の経験を基に,ネットワーク担当者の運用負荷の軽減と効率向上を考慮し,BCにWLCを導入することにした。ネットワーク担当者は本社で業務を行っており, WLCを利用すれば,遠隔地のBCへ出向く回数が抑えられると考えたからである。導入予定のWLCは,本社に導入したAPと同じメーカの製品であり,次のような機能がある。
 ・APの構成と設定を管理する。
 ・APのステータスを監視する。
 ・AP同士の電波干渉を検知する。

つまり、WLCによって、集中的な管理が行える。

H29NW午後Ⅱ問2では、WLCの機能に関して、以下の説明があります。

合計12台のAPの個別管理は困難なので,無線LANコントローラ(以下,WLCという)も導入する。調査したところ,WLCには複数の方式があったが,次の三つの主要機能をもつ製品を選定することにした。
・有線LAN経由での複数のAPに対する設定変更,ファームウェアのアップデートなどの一括処理機能
・APの負荷分散制御,PMKの保持などによるハンドオーバ制御機能
・利用者認証,認証VLANなどのセキュリティ対策機能
2.WLCの動作モード

同じくH24NW午後1問2に以下の記載がある。

今回の構成では,APがネットワークに参加すると, WLCとAPの間には,トンネルが構築される。そのとき, WLCは,次の二つのモードのいずれかで動作する。
 なお,トンネル化しても,データ量の増加は無視できる程度である。
①モードA:接続時の制御用通信だけがトンネルを使用し,データ用通信は,ノート間で直接行われる。
②モードB:制御用通信だけでなく,データ用通信も含めた全ての通信がトンネルを使用する。

Ciscoにしても、Arubaにしても、メジャーな無線LAN製品はWLCを経由することが多いと感じています。この問題文の言葉で言うとモードBである。
wlc
では、ネットワークスペシャリスト試験の過去問(H29秋NW午後Ⅱ問2)を見てみましょう。

(2)本文中の下線③の方式について,無線LAN端末による通信がWLCを経由する方式と比較したときの利点を二つ挙げ,それぞれ40字以内で述べよ。
※下線③は「③認証後に行われる無線LAN端末による通信は、WLCを経由しない。」とあります。

現在普及している製品では、後者のWLCを経由させるものが多いと感じます。その利点は、WLCで認証後の通信に関するポリシーなども一元管理できるからです。たとえば、ACLによるセキュリティのコントロールがしやすくなります。
今回は、WLCを通らない場合の利点が問われています。
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEあれ? 

WLCを毎回経由すると、WLCにつながっているLANケーブルの帯域が圧迫されそうですね。
その通りです。すべての通信がWLCを経由しますので、WLCに接続されているケーブルの帯域だけでなく、WLCの負荷も大きくなります。場合よってはWLCがボトルネックになり、通信速度が落ちる可能性があります。また、WLCがダウンすれば、通信ができなくなってしまいます。
この2点がこの方法のデメリットであり、その裏返しが解答の軸になります。
 40字以内でまとめると、以下のようになります。 

【試験センターの解答例】
・WLCに通信の負荷が集中するのを抑制することができる。
・認証後にWLCに障害が発生しても,その無線LAN端末の通信は継続できる。 

5.WPA2での改良点(ハンドオーバ時間の短縮)

無線LAN端末を移動しながら利用すると、接続するAPが変わります。このとき、接続するAPに改めてPMK(Pairwise Master Key )の作成などの認証処理が発生するため、少しの間、通信ができなくなります。
ap
この切り替わりの時間(ハンドオーバ時間)を短縮するために、WPA2では2つの機能が追加されています。
①事前認証
 APが切り替わるタイミングで認証するのではなく、同じネットワークに接続されている他のAPとは、接続しているAP経由で事前に認証を終えておきます。こうすることで、APを移動したときの認証を不要にします。
②認証キーの保持(Pairwise Master Key キャッシュ)
 一度認証した認証キーをAPが保持しておきます。そうすることで、認証済のAPに戻って接続するときに、PMKの再生成が不要になり、ハンドオーバ時間を短縮します。

ネットワークスペシャリスト試験の過去問(H25年NW秋午後Ⅱ問1)を見てみましょう。

IEEE 802.11iを基に策定されたWPA2(Wi-Fi ProtectedAccess 2)では,セキュリティ面の改善の他に,(い)事前認証及び認証キーの保持(Pairwise Master Key キャッシュ)を行う方法が規定されているので,接続先のAPを切り替える時間を短縮することが可能になった。

もう一つ、過去問(H29年NW秋午後Ⅱ問2)を見てみましょう。

WPA2では,事前[ j:認証 ]の方法及びPMKの保持方法が規定されている。これらによって,無線LAN端末がAP間を移動(以下,ハンドオーバという)するタイミングでの認証や認証済みのAPに戻ってきたときのPMKの再生成が不要になることから,ハンドオーバ時間が短縮される。

では、Windows8.1のPCでこの2つの設定画面を見てみましょう。
ワイヤレスネットワークの設定において、詳細設定のボタンから「802.11の設定」に、以下の画面があります。
ハンドおーば

6.無線の信号強度について

女性笑顔
・無線LANでは20mWくらいにするのが普通です。
・干渉波は0.00000001mW以下にするのが普通です。

ただ、小数点が増えると、よく分かりませんよね。
そこで、dBm表記をします。
dBmとは、1mWのときの信号強度を0dBmとした相対数値。よって、小さい場合はマイナス表記になる。
計算式: 電力(dBm) = 10log電力(mW)

例① 20mWをdBmにすると
10log20=10x(log2 + 1)=13

例② 0.1mWをdBmにすると
10log0.1=-10

例③ 0.00000001mWをdBmにすると
10log0.0000001=-80

よって干渉波は-80dBm以下にすると表現できます。(ちょっとだけ分かりやすいですね)

7.さまざまな無線の技術

BluetoothとZigBee、Wi-SUN以外は試験で問われていない。参考程度にとどめて欲しい。

◆Bluetooth
・2.4GHzの規格
・上下あわせて約1Mbpsの通信速度。
・デンマークとノルウェーを統一したバイキングの青歯王の名に由来している。
・青歯王のように、乱立した無線規格を統一するという願いがこめられている。
・ネットワークスペシャリスト試験の過去問では、Bluetooth1.0の説明として、「無線通信技術の一つで、消費電力が小さく、2.4GHz帯の周波数を使用し、1Mビット/秒の速度で10m程度の距離の通信を行うことができる特徴をもつもの(H16NW午前 問21より引用」としている。
・赤外線と違い、遮蔽物があっても通信できる。かばんの中の音楽プレーヤとイヤホンで通信できるのもこの性質のおかげである。
・ピコネットと呼ばれるネットワークを作り、1台の親(マスター)は7台の子(スレーブ)と接続できる。
・ネットワークスペシャリスト試験の過去問(H29秋NW午前Ⅱ問1不正解選択肢)では、「ア 2.4 GHz 帯を使用する無線通信方式であり,一つのマスクと最大七つのスレーブから成るスター型ネットワークを構成する。」と述べられています。

◆ZigBee
Zig(ジグザグに動く)Bee(ミツバチ)という名前のとおり、ミツバチのようにちいさな電波で小さく伝送するというのが由来だと思う。
UWBとは逆の性質をもつ。
低速で距離も伸びない。でも消費電力が小さく安い。
センサーネットワークなどで活用される気がする。
過去問(H29秋NW午前Ⅱ問1)では、「ZigBeeの特徴」として、「下位層にIEEE 802.15.4を使用する低消費電力の無線通信方式であり,センサネットワークやスマートメータなどへの応用が進められている」と述べられています。

◆Wi-SUN
読み方は「ワイサン」
ネットワークスペシャリスト試験の過去問(R1秋NW午前Ⅱ問15)では、「Wi-SUNではマルチホップを使用して500mを超える通信が可能である。」とある。
www.rohm.co.jp

過去問(R1秋NW午前Ⅱ)
問15 IoT向けの小電力の無線機器で使用される無線通信に関する記述として,適切な  ものはどれか。
ア BLE (Bluetooth Low Energy)は従来のBluetoothとの互換性を維持しながら,低消費電力での動作を可能にするために5 GHz 帯を使用する拡張がなされている。
イ IEEE 802.11acではloT向けに920 MHz帯が割り当てられている。
ウ Wi-SUNではマルチホップを使用して500mを超える通信が可能である。
エ ZigBeeでは一つの親ノートに対して最大7個の子ノートをスター型に配置した ネットワークを使用する。






正解は、ウ

◆SuperA/G
・IEEE802.11aと11gの無線LAN通信において、通信速度を向上させる仕組み。
データの圧縮などを行って高速化するため、もともと圧縮されている圧縮ファイルには効果がない。
・米国のアセロスコミュニケーションズ社が開発した高速化技術で、この会社の無線LANチップが搭載された無線LANカードでのみ利用できると思う。
・APと無線LANカードの双方でSuperA/Gに対応している必要がある。
・量販店にはSuperA/G対応のシールが貼ってある箱を目にする。
・名前の由来は11gと11aのSUPER版という単純なネーミングだろう。こういう名前は覚えやすいので結構好き。
 
◆UWB(Ultra Wide Band)
UWB(Ultra Wide Band)は伝送距離は短いが、数百Mbpsという高速通信を可能とする超広帯域無線システムです。過去問(H29秋NW午前Ⅱ問1不正解選択肢)では、「広い周波数帯にデータを拡散することによって高速な伝送を行う無線通信方式であリ,近距離での映像や音楽配信に利用されている」とあります。

用途はBluetoothと重複すると思う。
遮蔽物があっても通信できる。この辺りはbluetoothやZigBeeも同様。

■DSRC
DSRC(Dedicated Short Range Communications)に関して、ネットワークスペシャリスト試験の過去問(H29秋NW午前Ⅱ問1不正解選択肢)では、「5.8 GHz 帯を使用する近距離の無線通信方式であり,有料道路の料金所のETCなどで利用されている。」とあります。

8.APの配置設計とチャネル設計

ネットワークスペシャリスト試験の過去問(H29秋NW午後Ⅱ問2)を見てみましょう。

過去問(H29秋NW午後Ⅱ問2)
(4)図3の構成でAPを設置して,チャネルボンディングした周波数帯が重ならないようにするためには,少なくとも幾つの周波数帯のグループが必要になるかを答えよ。また,各APのセルを重ねる目的を,  25字以内で述べよ。






これは、実際に色わけして図3に書き込んでみると分かります。以下のように、青緑赤黒の4色あれば、周波数帯が重ならないようにできます。もし3色の場合は、以下において、緑を違う色にすることを考えましょう。すると、かならず他の色と重なってしまいます。
 1
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEあれ? 

もっと複雑な入り組んだ場合だったら、3色だったり、逆に4色以上になる可能性はないのですか?


 この色塗りの問題は、数学会では4色問題と言われ、どんな場合でも4色になります。たとえば、日本地図において、隣り合う都道府県の色が重ならないように塗るのも4色あれば実現できます。
ネットワークスペシャリストを目指す女性SEなやなや 

私の経験では、1、6、11の3チャンネルだけで設計した経験があります。
はい、2.4GHz帯を利用する場合は、3チャンネルで設計する場合が多いでしょう。その場合、以下のようにAPの位置を上下でずらして配置することが多いと思います。
 b 
さて、続いて、各APのセルを重ねる目的を考えます。先に結論を言うと、①ハンドオーバをスムーズに行わせるため、②APの負荷分散を行わせるため、です。このどちらかを答えます。

では、詳しく解説します。
①ハンドオーバをスムーズに行わせるため
 PCを移動する際に、たとえば、ハンドオーバーによってAP1からAP2に切り替わるとします。その際、AP1と通信が切れた際に、AP2を新たに探していては、通信の切り替えが遅くなります。重なりあう部分があることで、AP1からAP2への切り替えがスムーズになるのです。
 
②APの負荷分散を行わせるため
 たとえば、AP1の配下に作業デスクが密集していて、15台が接続しようとしたとします。一方、AP2の配下は通路が多くて接続するNPCが3台だとします。偏りがあります。もし、AP1とAP2に重なる部分があれば、AP1配下のNPCの何台かは、AP2に接続させることができます。

【解答例】
周波数帯のグループの数:4
目的:・ハンドオーバをスムーズに行わせるため
   ・APの負荷分散を行わせるため

9.無線LANの設計

ネットワークスペシャリスト試験の過去問(H25NW午後Ⅱ問1)を解いてみよう。

過去問(H25NW午後Ⅱ問1)
〔サイトサーベイの検討〕
 J君は,無線LAN導入に当たって留意すべき事項を調査し,その結果,サイトサーベイの実施について,次のように進めた。
本社は,テナントビルに入居し,隣接した複数のフロアを使用している。各フロアのオフィスは,壁やパーティションなどで分割されている。
本社のオフィスに複数のAPを導入するとき,サイトサーベイを実施しないと, (お)(a)導入後に通信できないエリアが発生する,(b)他社の無線LANの影響を受ける,(c)期待通りの通信速度が得られない,などの問題が発生する可能性が高い。この問題を防ぐためには,専用機材を用いて,APから送出される電波の伝搬状態及び電波干渉の発生源を十分に把握しておくことが重要である。
APから送出される電波の伝搬状態を把握していないと,APの最適な場所への設置,適切な電波強度の設定ができない。

設問5 〔サイトサーベイの検討〕について,(1)~(3)に答えよ。
(1)本文中の下線(お)の問題が発生するのを避けるために,サイトサーベイで調査すべき電波の状態を二つ挙げ,それぞれ25字以内で答えよ。
(2)サイトサーベイの調査結果を基に,導入作業前に確定すべき設計項目を二つ挙げ,それぞれ15字以内で答えよ。






(1)解答:
・社外から送信される無線LANの電波状態
・APからの電波到達範囲
・壁やパーティションの電波の透過状態

(2)解答:
・ APの設置場所の設計
・ 使用するチャンネルの設計
・ APの設置方法の設計
・ APの出力電波強度の設計

10.【コラム】無線LANはどこまで届く?

無線LANの設計において、電波調査は大事であり、APをどう配置するかが設計のポイントになる。
無線LANの電波はどれくらい届くのだろうか。
結構届くが、障害物によっても変わってくる。例えば、鉄筋の壁があればそこでかなり遮断されてしまう。
見通しがよければかなり届くが、オフィスで利用するとすると、20m以上は離さないほうがよいかなと思っている。

また、どこまで届くかについて、面白いことが書いてあった。暗号解読(新潮文庫)より引用する。
「無線通信に批判的な人たちは、電波は地球の表面に沿ってカーブするわけにはいかないから、無線による通信はたかだか百キロメートルほどの距離でしか使えないと論じていたのだった。(中略)電離層は地上60キロメートル付近からはじまる大気の層で、これが鏡のような働きをして電波を跳ね返していたのである。電波は地表でも跳ね返されるため、電離層と地表の間で何度も反射される。そのおかげで無線通信は、事実上、世界中のどこにでも届くのである。」

この本は暗号について書かれた本であり、とても面白い。勉強というよりは楽しみとして読んでみるのはいかがでしょうか。