ネットワークスペシャリスト - SE娘の剣 -

左門至峰によるネットワークスペシャリストの試験対策サイトです。勉強方法、合格体験談、合格のコツ、過去問解説、基礎知識などの紹介します。

試験概要

1.試験はどうやって作られているのか

試験センターのサイトに解説がある。
http://www.jitec.ipa.go.jp/1_13download/guidebook_pdf/guide_200702_19.pdf
いくつか抜粋する。

急速に進む情報技術に柔軟に対応し、質の高い試験を維持するため優秀な専門家378 名(平成19 年1 月4 日現在)からなる試験委員会を当試験センターに設置し、試験問題作成、採点、合格候補者の確定作業を厳正、公正に行っています。
試験委員は、情報サービス産業、一般企業、学会・大学など第一線で活躍されている方々であり、理論に基づいた高品質の試験問題、実務に基づいた実践的な試験問題を作成しています。

※「実務に基づいた実践的な」という部分は大切なキーワードである。学問的な内容ではなく、実務に基づく出題である。

また、問題は何度も議論されていることが分かる。詳しくは以下 

試験問題は、一人の委員がそれらしく作ったらそれで完成するようなものではない。問題作成担当の委員会でじっくり揉む。委員会でこれなら出題できる水準だと認定されて、初めて出題候補として登録され、選定担当の委員が検討する対象になる。選定の段階で再検討となる出題候補も多い。うまく選定され、出題問題になると、試験のテーマ・表現として適切か、別の専門委員のチェックを受ける。このサイクルを複数回廻して、やっと完成する。この間で、いわゆるβ試験にも供される。解答者は試験委員仲間たちだ。問題により数名から数十名が、試験のときと同様に解答してみて、所定の時間内に適切に解答できるかどうかチェックすると共に、気がついた事項をコメントする。β試験は問題を一流の完成品にするための実践的な、そして大変重要なステップである。

このβ試験、正式名称もあるが、一部の委員仲間では「モルモット」と愛称されている。

 例えば、ある区分の午後2問題の場合、モルモットが10 数名いる。モルモット達は問題を解きながら、「何かおかしい」と感じてコメントすることもある。そのようなところには、実務上何か不自然なところがあるもの。その原因を追究して、修正して出題する。
 モルモットは採点者泣かせの解答も考える。この問ではこういう別解も考えられるがそれを不正解だと言えるのか、と挑んでくる。想定外の解答の多くは、この段階で問題修正され、排除されていく。

ef6167f8.jpg


そんなに議論されているんでしたら、別解はほぼないんでしょうね。
また、試験は約1年の歳月をかけて作成される。
sakumon

2.対象者像と期待する技術水準

▼対象者像
情報システム基盤(業務システム共有のシステム資源)の構築・運用において中心的役割を果たすとともに、個別の情報システム開発プロジェクトにおいて、固有技術の専門家として開発・導入を支援する者。具体的には、ネットワークを固有技術とする。
(IPAより引用)

▼期待する技術水準
以下、IPAのサイトより引用  

ネットワークは情報システム基盤であり,個別のアプリケーションシステムの構成要素ともなる。また,マルチメディアへの展開も含め,ネットワークに要求される機能要件は急速に進展している。目的に適合したネットワークを構築・維持するため,次の幅広い知識・経験・実践能力が要求される。
①ネットワーク技術・制度の動向を広く見通し,目的に応じて適用可能な技術を選択できる。
②企業・組織全体又は個別アプリケーションのネットワークへの要求を的確に理解し,ネットワーク要求仕様を作成できる。
③要求仕様に関連するネットワーク設計技法,プロトコル技術,信頼性設計,セキュリティ技術,通信サービス・料金などを選択して,最適な論理設計・物理設計ができる。
④ネットワーク関連企業(通信事業者,ベンダ,工事業者など)を活用して,ネットワークの効率的な構築・運用ができる。

3.ネットワークスペシャリスト試験の合格率

以下が合格率のデータである。
女性口開き

めちゃくちゃ厳しい試験ですね!
17年度からソフトウェア開発技術者の秋試験が開催されたため、「ネットワークは敷居が高い」という人がソフ開にずいぶん流れた。その影響もあり、合格率が上がっている。
ソフ開はネットワークの下位資格にあたるため、スキルの高い人がネットワークを受け、低い人がソフ開を受ける傾向だったようです。ですので、スキルの高い人たちによる競争だったため、合格率が上がっても難易度が落ちたわけではない。

項目 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
応募者 54,060名 46,151名 29,996名 26,143名 24,918名 24,182名
受験者 31,350名 26,590名 18,295名 16,108名 15,215名 15,117名
合格者 1,974名 2,106名 2,263名 1,793名 1,915名 1,664名
合格率 6.3% 7.9% 12.4% 11.1% 12.6% 11.0%

 

でも、見方を変えてみよう。
たとえば、以下のデータ(H23年のデータ)

項目 受験者 突破者 突破率

午前2突破率

12,295

7,615

61.9%

午後Ⅰ突破率

7,457

3,979

53.4%

午後Ⅱ突破率(合格率)

3,974 2,069 52.1%

各試験において、それぞれ5割の合格率。午後Ⅱだって5割。そう思えば、ちょっと楽では?

その他、受験者数、合格者の平均年齢、最高・最年少年齢などの統計情報をまとめたい。

4.役割と業務

ネットワークシステムを計画・設計・構築・運用する業務に従事し,次の役割を果たす。
①ネットワーク管理者として,情報システム基盤であるネットワーク資源を管理す
る。
②WAN/LAN に対する要求を分析し,効率性・信頼性・安全性を考慮した設計・構築・運用を行う。
③個別システム開発の各工程(計画・分析・設計・運用・保守)において,ネットワ
ーク関連の技術支援を行う。

(IPAより引用)

5.出題範囲(午後の試験)

女性笑顔以下、IPAより引用しています。

1 ネットワークシステムの設計・構築に関すること
ネットワークシステム(データ・音声・画像,LAN・WAN を含む)の要求分析,論理設計,物理設計,信頼性設計,性能設計,セキュリティ設計,アドレス設計,運用設計,インプリメンテーション,テスト,移行,評価(性能,信頼性,品質,経済性ほか),改善提案 など

2 ネットワークシステムの運用・保守に関すること
ネットワークシステムの運用・保守管理,運用・保守体制,セキュリティ管理,セキュリティ管理体制 など

3 ネットワーク技術・関連法規・標準化に関すること
ネットワーク構成要素,待ち行列理論,トラフィック技術,ネットワーク構成技術,ネットワークセキュリティ技術,ネットワーク関連法規及び倫理規定,ネットワークの標準化など

4 ネットワークサービス活用に関すること
市場で実現している又は実現しつつある各種ネットワークサービスの利用技術,評価技術など

6.シラバス

◆ネットワークスペシャリストのシラバスです。
試験で問われる内容が書かれていますが、なんとなくイマイチです。
http://www.jitec.ipa.go.jp/1_13download/syllabus_nw.pdf

◆応用情報のシラバスです。
このなかのネットワークの分野(P38~)に注目しましょう。
こちらはキーワードが掲載されており、どんな内容を勉強すればいいのかが具体的に分かります。
このサイトでは、このシラバスのキーワードをしっかり押さえて解説しております。

7.CCNPと比較してどっちが有用な資格ですか?

女性目閉じる
ネットワーク関連の資格には、ネットワークスペシャリストのほかにCCNPがありますよね。
どちらの資格が有用でしょうか?
「どちらが良い」と結論を出す問題でもない。そもそも、ネットワークスぺシャリストとCCNPでは、求めているものが違う。また、資格の価値はその人のおかれた環境によって大きく変わる。医師免許とCCNPとどっちが役に立ちますか?という質問に答えるようなものだ。

▼目的
(1)ネットワークスペシャリスト
幅広い分野から出題される。LAN、WAN、DNS、メール、セキュリティ、IP電話、などなど。
(2)CCNP
基本的にはCisco製品に関する設定方法が中心。CCNAも同様。

▼活用分野
(1)ネットワークスペシャリスト
活躍分野が限定される資格ではない。このことから、「取得しても意味無い」と言われることもある。
(2)CCNP
Cisco関連の仕事。Ciscoの1次ベンダで仕事をするのであれば有効だ。逆に、ネットワーク関連の仕事であっても、Cisco製品を担当する部署ではない場合、CCNPの活用度は落ちる。

8.質の高い試験

IPAのサイトでは、次の記載がある。
http://www.jitec.ipa.go.jp/1_08gaiyou/_index_gaiyou.html

3.質の高い試験
急速に進む情報技術に柔軟に対応し質の高い試験を維持するため、IT現場の第一線で活躍されている専門家や、大学・研究所など高等教育機関に所属されている専門家約400名からなる試験委員が問題を作成しています。

女性笑顔
専門家400人で作っているって
すごいですね!
それと、日経BP社が、社員に取らせたい資格というのを調査している。
ほとんどが情報処理試験である。ちなみにネットワークスペシャリストは堂々の2位である。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081204/320690/?SS=imgview&FD=54139247&ST=system

9.かなりの受験者数

「情報技術に関する試験は、民間でも多く行われているが、年間応募者数が60万人を超える情報処理技術者試験に匹敵する規模のものはない。」これは、センター試験よりも多い規模ではないか
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g61107b05j.pdf
※2012年度センター試験の受験者は約56万人

10.答案はなぜ公開されないのか

自分の答案がみたいけど・・・という質問があり、以下に回答があります。
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_09faq/_index_faq.html

そのリンク先(https://www.ipa.go.jp/files/000001375.pdf
「独立行政法人情報処理推進機構の保有個人情報の開示請求に対する措置等に係る審査基準」
のp21に以下の情報があります。
点数を開示していますし、さらに答案も開示することで、「判定・評価の手法に関する詳細な情報」が公開されてしまうことが理由でしょう。

-------------
5)公にすることにより、監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがある情報
・監査等の対象、実施時期、調査事項、監査手法その他の監査等に関する詳細な情報
・試験の管理・監督の手法や判定・評価の手法に関する詳細な情報
・試験問題の作成要領その他の試験の問題作成に関する詳細な情報
・その他公にすることにより、監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがある情報